陥りがちなプロジェクトの落とし穴と改善点(その2)

先日の記事では、マネージメントと設計について書きました。

  • 一時的ではなく、継続的に要件・仕様を詰める事
  • 問題が発覚する前に動く事
  • 「とりあえず」の意識
  • 伝える事を前提にしていない意識
  • 適切なツールを使っていない

が問題を引き起こす、という事を書きました。

今回は

  • 伝える事を前提にしていない意識
  • 適切なツールを使っていない

という2点について詳しく書いていきたいと思います。

伝える事を前提にしていない意識


これについては、「意識」という決まったフォーマットの存在しないものなので、変えていくのは非常に難しいです。例えば、一般顧客向けのサポートセンターでは、症状や前に行った操作を説明する事ができずに、単に「動かない」という不満だけが寄せられると聞きます。伝えたい事・不満が全面に出過ぎて、本来の目的であった改善するために必要な事が省かれてしまっています。
これは笑い事ではなくて、日々の同僚や友人との会話の中にも、同様に現れてしまう事だと思います。

それがプロジェクトという共通の目標を持った間柄であっても、前提条件が異なっていれば当然発生しうる現象です。例えば自分(もしくは同僚)しか詳しく知らない情報を前提に話を進めてしまえば、伝わる情報も伝わらなくなります。
ましてや、プロジェクト単位で集まった一時的な人の間で意思疎通が上手く行かないのは当然の事です。

では、「意識」を改善するための方法が無いかと言えばそうではありません。有名な言葉として、以下のようなものがあります。

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
by マザー・テレサ

これは正しいと思いますが、私は行動から言葉、思考にフィードバックさせる事も可能だと考えています。
どういう事かと言うと、次の「適切なツールを使っていない」にも関連しますが、特定のフォーマットを義務づけるという事です。

画面設計にER図を使う人はいません。急ぎの連絡を郵送で行う人はいません。

ER図はデータベースの関連を示すものであり、考慮が足りずに、足りない情報があったとしても、そこには必要な情報を記載するための一般的な方法があります。
適切なツール・仕様書フォーマットを使う事で、「意識の低さ」というのはカバーできると考えています。

適切なツールを使っていない

本来プロジェクトを円滑に進める為のツールであるはずのツールを、誤った場面で使っている場合も少なくありません。こちらは単純な情報・知識不足が原因の場合が多く、比較的容易に改善する事が可能です。検索すれば仕様書のフォーマットはヒットしますし、他のプロジェクトで使ったものを再利用しても良いでしょう。まずは使ってみて、プロジェクトの大きさ、内容に沿ったものを探してみるのも一つの手だと思います。

その中で良くある間違いが「Excel症候群・Excel」です。資料のほとんどがExcelで作られてしまう病気・依存症の事ですが、過去において良く遭遇した事と思います。Excelが素晴らしいプロダクトであり、様々なドキュメントを簡単に作れる事に異議はありません。
しかし、ことプロジェクト進行にとって妨げになる事が多々あります。理由を以下に列挙します。

  • 管理の煩雑さ
  • 表示の互換性
管理の煩雑さ

過去において以下のような体験をした方も多いのではないでしょうか?

  • ファイル名が「****_年月日.xls」
  • ファイル名が「****_年月日_2.xls」
  • ファイル名が「****_最新版.xls」
  • ファイル名が「****.xls」「****A.xls」
  • 同名のファイルが複数のディレクトリに存在している

上記の様な類似のファイルがいくつも存在する事になり、正しい最新版を見つけるのが困難になります。プロジェクトに関わっている人にとっては問題ないかも知れませんが、途中で参画された人や、全くの他人がこれらの中から正しいものを探し出すのは困難です。
変更箇所を管理する機能もありますが、ファイル名での管理の方が楽なせいか、あまり使われている実感はありません。

表示の互換性

これについては、統一されたプラットフォーム上でプロジェクトが進められている場合は問題がありません。社内の全てのPCにMS Officeの同じバージョンが入っている場合などです。
しかし、Officeソフトも多様化し、OSも多様化しています。Macがメインで使われている会社というのも増えてきました。
こういった他社との連携を行う際に、表示の再現性の低いフォーマットは使うべきではありませんMS Officeの最新版が必ず入っているという誤った認識は改められるべきで、PDFやリッチテキストなど、多くの環境で崩れない(もしくは崩れても問題無い)フォーマットでやりとりするべきです。

まとめ

Excelで作られた無駄に凝ったガントチャートやER図、画面設計書を見た事はあるかと思います。これらは、より効率的なソフトウェアやフォーマットを知らないが為に起こる悲しい現実です。
ガントチャートRedmineの様なバグ管理システムなどを使えば、手動でセルを塗りつぶしたり、移動させたりする必要もなく、進捗管理にもそのまま使う事ができます。
ER図は、MySQLなら、MySQL Workbenchなどを使えば、設計をしつつドキュメントを生成する事もでき、ドキュメントが実装と異なってしまうという事も少なくなります。

これらの適切なツールを使えば、人の手を煩わせる事無く、無駄な工数も使わずに一定の資料を生成する事ができるのです。これは単純に知らない事が徒になっていますので、まずは手元のExcelを捨てて、適切なツールを使ってください。最初は使いにくさも感じると思いますが、全てを使いこなそうとする必要はありません。専用に作られたアプリケーションは、汎用的なExcelよりも多くの事でプロジェクトを助けてくれるはずです。